最近、この問題を考える上で有益と思われるページを発見したので、検討の材料として紹介したい(なお、いうまでもないが、以下に紹介するページについても、作成者に無断で、かつ、目的のホームページに直接リンクしている)。
二 まずは、藤田康幸弁護士の最近の重要判例について。
藤田(敬称は略させてもらいます)は、まず、医療過誤訴訟における医師の注意義務が、最高裁第三小法廷1982(昭和57)年 3月30日判決(判時1039-66など)の「注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である」との基準によって、事実上「低い医療水準」に見合った低い注意義務しか課せられなかった「悪影響」を指摘する。
その上で、この傾向は平成7年から9年にかけての一連の最高裁判決によって大きく是正された、として、
A 最高裁第二小法廷1995(平成 7)年 6月 9日判決(民集49-6-1499、判時1537-3など)
B 最高裁第三小法廷1996(平成8)年 1月23日判決(民集50-1-1、判時1571-57など)
C 最高裁第三小法廷1997(平成 9)年 2月25日判決(判時1598-70など)
D 最高裁第三小法廷1997(平成 9)年 2月25日判決(判時1598-70など)
E 最高裁第三小法廷1996(平成8)年 1月23日判決(民集50-1-1、判時1571-57など)
F 最高裁第二小法廷1995(平成 7)年 6月 9日判決(判時1537-3など)
G 最高裁第二小法廷1995(平成 7)年 5月30日判決(判時1553-78など)
H 最高裁第二小法廷1992(平成 4)年 6月 8日判決(判時1450-70など)
を挙げる(この他、下級審判決も引用されていたが、省略した)。
そして、裁判官によって結論が変わること、患者勝訴でも審理期間に異常に時間がかかることを問題点として挙げた上、「訴訟手続の適正さを確保しつつ迅速な審理が行われるような改善、あるいは、当事者の了解の下での代替的紛争解決手段(ADR)が真剣に検討されるべきであろう。」と結論付けている。
非常な力作であり、私なども読んでいて「なるほど」と思った。文章・論旨も平明なので、法学部の学生以上の方なら、是非とも目を通して損はない論文である。
さて、学部学生なら論文で引用されている事案・判決要旨だけで足りるのであるが、実務家としては、やはり、原文に当たる必要を感じることもよくあることであろう。
ここで、B〜Eは、実は私のホームページの中に判決文が紹介されている。また、C・Dは、最高裁のホームページの中にある。
そこで、藤田は、例えば次のような形でこれを紹介している。
「※この判決には「法律家ゴマのホームページ」(http://village.infoweb.or.jp/~fwgl6015/)の「最新の最高裁判例の紹介のページ」、「最高裁判所のホームページ」(http://www.courts.go.jp)の中の「最近の最高裁判決」のページを通じてアクセスできる。」
法律家の常として、判決には引用元(民集・判時など)を明示してあるので、これを元に原文を探せば足りるのであるが、せっかくネット上に原文があるのであれば、ネット上の論文でそれを紹介しないのは画龍点晴を欠くというもので、藤田の論文は何とも親切かつ適切な方法で判決文を紹介しているといえよう。
しかし、である。
目的の判決には、直接リンクを貼ることは容易である。だから、問題の判決に直接最高裁のホームページまたは私のホームページの当該判決にリンクを貼っておけば、論文を読み、疑問を感じたらその場でクリックすると直接判決文を読むことが可能である。これに対し、藤田方式では、問題の判決の年月日を覚えておいて、一旦最高裁のホームページまたは私のホームページのトップに行き、そこからリンクを辿って問題の判決を探さなければならないという手間がかかる。これでは煩瑣だし、そこまでして原文を見ようという意欲がなくなってしまうとすると、せっかく優れた論文に触発されて勉強しようという意欲を減退させてしまい、もったいない話である。
藤田としては、下位ページへの直接リンクは遠慮したためにこのような形になったのだろうが、何とも惜しいことである。
三 次いで、学習院大学の神前禎(同じく敬称は省略)の国際私法判例のページを取り上げる。
このページは、「インターネット上で公表されている国際私法判例へのリンクのページです。今のところ、最高裁のホームページ及び法律家ゴマのページに公表されているものの中で、国際私法と関連するものにリンクしています。」とのことで、平成10年12月31日現在、12の最高裁判例を引用している。
リンクは、最高裁のホームページまたは私のホームページの該当判決に直接貼られているので、読んでいて詳しく知りたい判決については、クリックすると一発で原文を読むことができる。
神前のホームページは、学生への教材ということを念頭において作っているらしく、「国際私法判例」のページも同様の趣旨なのかもしれない。
せっかく国際私法学者が入手容易な判決について直接リンクを張って紹介しているのに、判決の要旨しか書いていないのは、何だか不親切な気がする。欲をいえば、国際私法学者として論旨を紹介するとか、何らかのコメントが欲しかったところである。
しかし、興味があればさしたる手間もなく直接判決文を読むことができるという意味で、このページは優れたコンセプトに基づいて作成されている、と私は感じた。
四 藤田康幸弁護士の最近の重要判例についてと学習院大学の神前禎の国際私法判例の2つのページを取り上げてみた。
両者を見較べて見れば、下位ページへの直接リンクの有用性について実感できると思うのであるが、いかがであろうか。