普通の「検索」機能は、現在開いている文書の中から特定の単語をピックアップしていく機能ですが、GREP検索は、一定の範囲の文書の中から特定の単語をピックアップして、その単語を含む一行の一覧リストを作ってくれる機能である、といえます。
WINDOWS95になってから、「検索」機能が標準で付いてくるようになったので、これを使えばGREP検索同様のことができます。また、一太郎等のワープロソフトでも、これに近い機能が付けられるようになりました。しかし、使い勝手や検索スピードという点ではGREPの足元にも及びません。ぜひ一度おためし下さい。
二 具体的な使用方法
1 例えば、自分のハードディスクの中のどこかに「田中」さんに関する文書(訴状でも、判決書でも、E−MAILでも)があるはずだけど、そのファイル名や、どのフォルダにあるのか思い出せない、ということもあるでしょう。その場合、片っ端からそれと思われるファイルを探すことも考えられなくはありませんが、ファイルが数百、数千となると、そもそもそんなことをしようなどとは考えないでしょう。そんな場合も、「秀丸」に標準でついているGREPを使うと、せいぜい数分のうちにはそのファイルを発見することができます。
2 具体的に見てみると、秀丸の「検索」→「GREPの実行」を選び、「検索する文字列」に「田中」(慣れてくると、正規表現を使うことにより、「田中」か「田口」かを含むファイルとか、「田口」以外の「田〜」を含むファイルとか指定ができます。)、「検索するファイル」に「*.*」(どんなファイル名だったか全く覚えていないとき。秀丸で作ったということは覚えている場合は「*.TXT」にしたり、文頭に「S」が使われていたことは覚えている場合には「S*.*」にしたり、いろいろ絞ることで検索スピードを上げることができます。)、検索すべき「フォルダ」を指定し(どこにあるか全く分からない場合は「C:¥」等ハードディスク等の全てを指定し、多少は分かっている場合は「C:¥DATA¥」等と絞るとスピードが上がります。)、「サブフォルダも検索」をチェックしておきます。こう書くと面倒なようですが、やってみると簡単です。
以上の設定を終わって「OK」を押すと、検索を開始し、その結果は検索一覧に表示されます(その文字列を含むファイル名・行数と、その文字列を含む一行)。
3 このように一覧が表示されれば、それ自体がテキスト文書なので保存することもできますが、目的の文字列のところにカーソルを持っていって、「その他」→「タグジャンプ」を実行すると、目的の文字列を含むファイルが開いて、その部分を表示してくれます。
三 活用の場面
1 何といっても、「たしかこんな文書を作ったはずなのに、どこに保存したか忘れてしまった」という場合、その文書中に使った単語をおぼろげにでも覚えていれば、確実にその文書を見つけだすことができます(あるいは、確実にその文書がなくなっている=削除等したことが分かります。)。
これは、紙でデータを貯めていた場合に、そのデータがどこにあったか思い出せず、結局探すのを諦めていた(そのようなことが、私にはよくありました。)ことを考えると、非常に有り難いことです。
2 GREPの機能としては上のことに尽きますが、これを使うことで、テキストデータをデータベース的に使うことができます。
(一)データベースというと、ACCESS等のデータベースソフトが思い浮かびますが、データベースとは、要するに所定の情報が貯蓄されており、そこから必要な情報が取り出せる体制になっているもの、と考えてよいと思います。そのように取り出した情報を一定の順序に従って並べ替えたり、取り出した情報から一定の傾向を分析したり、というようなこともデータベースの一機能であり、これらのためにはやはりデータベースソフトを使う必要がありますが(ただ、EXCEL等の表計算ソフトで十分な場合も多い。)、我々法律家にとってそのような利用方法は副次的なものといえるのではないでしょうか。
そうすると、データをテキスト文書の形で何でもハードディスク(MOでもZIPでも何でも良いが、フロッピーディスクのような容量の小さなものでは使えない。)に保存しておき、GREP検索をかければ、いつでも目的のデータを探すことができるというのは、まさにデータベースそのものということすらできるでしょう。しかも、このデータベースは新たに操作方法の習熟が不要であるのは有り難いことではないでしょうか。
(二)何か調べものをしたとき、とりあえずその結果をテキスト文書として保存して下さい。時間があれば、文献の内容を要約したり、重要な点を抜き書きしたり、自分なりの調査結果をまとめたりした方がいいでしょう。時間がなければ、問題点と文献名だけのメモにしておきます。そして、コピーした文献は大胆に捨ててしまいましょう(私も、コピーを色々な方法でファイルしたりしていましたが、場所を取るのはともかく、探すのが面倒でほとんど役にたちませんでした。丁寧にその内容をまとめておけばコピーは不要になりますし、文献名さえ発見できれば、必要な際再びコピーを取った方がかえって効率的です。)。
訴状・準備書面・判決書・手控え等、仕事上作った書類も、全てテキスト文書に直して保存します。手控えは、作り直すときも以前作ったものは別の名前で保存しておいた方が後々のためでしょう。事件が終わっても関係文書を削除してはいけません(後日何かの役にたたないとは限りません。テキスト文書なら、100MB程度のハードディスクの空きがあれば一生分は足りるでしょう。)。
自分の業務日誌も作っておけば何かの役に立つでしょう。日記は書くのが面倒ですが、日付けとその日何をしたかだけを書くだけで充分です(この程度なら、1週間分をまとめて書いてもそれほど面倒ではありません。)。書くのが面倒で怠けているうちに何をしたのか忘れてしまった場合は、その間が空白でもかまいません。とにかく、「何かの役にたつかも知れない」程度のスタンスで、気楽に続けることです。
(三)データベースに入れるデータは、自分が作ったデータだけではなく、インターネットやパソコン通信で手に入れたデータも、それがテキスト文書(拡張子が「.HTM」「.HTML」のHTML文書でも同じ)の形式でありさえすれば同様に扱うことができます。
インターネットを色々見てもらえば、条文や、各種の論文がテキスト文書(又はHTML文書)が公開されているので、それを取り込めば非常に色々な局面で役にたちます。条文は、使い慣れた六法が手元にあればそれを引いた方が早いのですが、条文データがハードディスクの中にあれば、六法が手元にない(六法がある部屋まで歩いていくのが面倒なときもある。ないですか?)場合に即座に引くことができますし、また、自分の文章の中にそのままコピーして使い回すことができます。
ちなみに、リンク集でも取り上げましたが、「古今集」「万葉集」から、「注文の多い料理店」まで、各種の文学作品の原文もインターネットで電子データの形で手に入ります。
いずれも、英語の方が充実した情報があるらしいのですが、日本語のインターネットもなかなか捨てたものではありません。今後更に充実していくことでしょう。
これらは、無料であることが肝心なところで、気楽にデータを取ってきて自分のデータベースの一部とすることができます。パソコン通信では有料で充実したデータが提供されていますが、これは必要に応じて利用すればよいことで(私は利用したことがない。)、何でもかんでも自分のハードディスクに入れなければ気が済まない、となってしまうとやり過ぎでしょう。
四 活用のヒント
1 データは一か所に集める。
ハードディスクが一番だと思いますが、MO等の大容量メディアであれば何でもいいでしょう。ともかく、データは色々なところに入れるのではなく、一か所に集める必要があります。
しかも、一つのハードディスクの中でも、「データ保存用フォルダ」に全てをまとめておいた方がいいでしょう(ハードディスク等の全体がデータ用として使えるなら、別にそのような配慮は不要です。)。GREP検索の際、ハードディスク全体にGREPをかけるより、一定のフォルダに限って検索した方が早いからです。何も気にせず保存していると、一太郎文書は一太郎のフォルダ、EXCEL文書は「My Documents」フォルダ、秀丸文書は秀丸のフォルダ、と分かれてしまうので注意が必要です。各ソフトの「オプション」等で保存フォルダを指定できる場合があるのでそれをしておくと便利でしょう。そうでない場合は、保存の度にデータフォルダを指定する必要があります。
2 データの保存名には余り気を使わない。
全般に言えることですが、データベースは一定程度の情報が集まって初めて機能するものなので、気楽に、面倒を避けながらデータを蓄積していく必要があります(ある日突然データベースとして機能し始めます。)。
データの保存名は、WINDOWS95になってロングファイルネームが使えるようになったので非常に使い勝手がよくなりましたが(昔は半角で8文字、全角で4文字しか使えなかったので、全角は避け、半角で記号のようにしなければならなかったため、時間がたつと文書名を見ても何の文書だったか忘れてしまうケースが多々あった。)、それでも保存名を何にしようかと考えてしまうこともあります。
しかし、GREPがあれば文書名を忘れても大丈夫だと考えて、余り気を使わないで保存した方がいいでしょう。
もっとも、「超」パソコン勉強法のように、単に時系列に並べればよいとは考えていません。GREPがあっても、文書名を見ただけで何の文書か分かった方がいいに越したことはありません。また、「仕事」「勉強」「趣味」等、データの内容によって保存フォルダを変えた方が、GREPをかける際もフォルダ指定により検索スピードが上がるし、GREPを使わなくても目的ファイルに到達する可能性が高くなるでしょう。肝心なのは「気を使わない」ということです。明らかに一定の類型に属する文書はまとめて、その余は「その他」フォルダに入れておけばいいだけです。
3 GREPの一行しか表示しないという点を念頭に置く。
これは、私もできていることではなく、「こうなればいいな」ということなので、そのつもりでお読み下さい。
GREPは目的の単語を含む一行しか表示されません。また、目的の単語がたくさんある場合は、その全ての行を表示してしまいます。つまり、たくさんの単語がヒットし、その行に特定の目印がないと、(ファイル名を参考にするとはいえ)一つずつタグジャンプして探していかなければなりません。これは、ときに結構大変なことです(データベースソフトなら更に絞り込んで検索することができるが、テキストデータベースではそれができない。)。QGREPという、目的の単語を含む前後数行を表示してくれるソフトもあり、私も愛用していますが、数行を表示するとヒットした数が多いと読むだけで疲れてしまいます。)。
だから、後に検索することを考えて、情報量を増やした見出し的な行を入れておくと便利ではないか、と思うのです。
とはいえ、後に何を検索するか分からないけれど一応情報を蓄積していくのがテキストデータベースの真髄であることから考えると、実行は困難かもしれません。また、情報量を増やすために一行を長くするとやはりGREP結果を読むのが疲れてしまうので、痛し痒しというところでしょうか。この点では、やはり市販のデータベースソフトにはかなわないでしょう。