「秀丸」を使う





一 法律実務家のみなさんは、おそらくワープロは「一太郎」を使っていることと思います(そうでない方もおられましょうが、縦書き文書を作る限りは「一太郎」が一番使いやすいように私は思います。ちなみに、裁判官では「一太郎」、書記官は「OASYS/WIN」が「公的」ワープロソフトのようです。縦書き文書に「WORD」を使っている人はいるのでしょうか。「WORDPRO」もいいといううわさを聞きますが、使っている人を見たことがありません。)。
 しかし、だからといって全ての文書作成に一太郎を使うことはありません。
 本稿では、文章作成のためにエディターを使うことを提案してみたいと思います(エディターを使ったことがない、と言う人だけお読み下さい。エディターを使ったことがある人にとっては当たり前のことしか書いていません。)。


二 エディターとは何か、ワープロとどこが違うのか、の定義的な問題は、私は分かりません。が、印象的なものとしては、エディターとは専ら文字を入力して保存する機能に特化したプログラムであるのに対して、ワープロは印刷機能やレイアウト機能など「文書をきれいに見せる」ための機能を付加したものであると考えていいと思います。
 WINDOWS用のエディターとしては、WZエディター(DOSの「VZエディター」に相応するもの)など市販のものもありますが、シェアウエアソフト(只で配っており、使ってみて気にいればお金を送るソフト。)でも同等以上の機能を持ったエディターがたくさんあります。本稿では、私の愛用している「秀丸」を例にとって話を進めたいと思います(同じシェアウエアソフトの「Akira32」がいいと本に紹介されていました。初めての方であれば、両方を試した上で、使いやすい方について送金して利用して欲しいと思います。)。


三 総論

 1 エディターをなぜ使うのかというと、もちろん、ワープロにはない利点があるからです。
 詳しくは後述しますが、第一に、そして最大の利点は、エディターはテキスト文書を扱うという点です。この結果、保存性が極めて高く、また、GREP検索を使うことで普通にデータ入力しているだけでデータベース的な使い方ができます。
 その他の利点を挙げると、動作が軽快であること(起動・カーソル移動・保存・終了がいずれも高速に行えること)、キーカスタマイズが容易であること、多用なマクロが公開されていること(マクロについては別稿を参照して下さい。)、等が挙げられます(この他にも多種多様な利点があるようですが、私が実感しているのは以上です。)。

 2 なお、エディターが優れているからといって、エディターだけで(法律家に必要な)仕事ができるわけでもありません。エディターは印刷機能が貧弱である、レイアウト機能がないに等しい等のマイナス点があります。つまり、きれいにレイアウトして印刷する、という側面ではワープロに頼らないとならないのです(エディターで、横書きにした訴状や判決書を作ることはできますが、それを公に使うというのはやはり勇気(蛮勇?)が必要というべきでしょう。テキスト文書を縦書きで印刷できるシェアソフトもあるようですが、レイアウトのことを考えるとワープロの方が優れていると思います。)。
 だから、エディターで文章を作り、最終的にはワープロでこれを読み込んでレイアウトしてきれいに印刷する、という使い方が、最もそれぞれの機能に即した使い方といえると思います(パソコンを普通に使うようになると、印刷せずに電子データのまま保存し、使用する文書も増えてくる点も指摘していいと思います。)。


四 エディターはテキスト文書を作る

 1 テキスト文書とは、文字だけで何の装飾(レイアウト・罫線(もっとも、棒線等を使って罫線らしきものを作ることはできます。別稿を参照して下さい。)・作図等)もない文書です。いってみれば、データが裸で存在する文書というイメージでしょうか。
 普通、拡張子は「.txt」となりますが(ちなみに、一太郎v6は「.jbw」、ワードは「.doc」等が使われています。)、これに限らず、色々な拡張子を付けることができます。なお、テキスト文書であっても、プログラムの説明などの文書では「.doc」の拡張子が使われており、ワード文書と区別が付きにくくなっていますが、これはワード(マイクロソフト)が悪いといえましょう。
 HTML文書(インターネット・エクスプローラー、ネットエスケープ等のブラウザソフトで見ることができる、主にインターネットで使われる文書)も、テキスト文書に<P>などの「タグ」を書き込んだものに過ぎず、エディターで作成・編集・保存することができます。パソコン通信で取得したログファイルもテキスト文書です。

 2 テキスト文書は、普通のワープロソフトでも作ることができます。
 例えば、一太郎6.3の場合、普通に保存すると一太郎文書になりますが(つまり、拡張子が「.JBW」となり、一太郎以外では読めない文書になる。)、その際、「ファイル形式」というところを「テキスト形式」にしてから保存するとテキスト文書になるのです(つまり、拡張子が「.TXT」等となり、あらゆるワープロ・エディターソフトで読むことができる文書になる。)。
 この意味ではエディターの優位は相対的なものに過ぎませんが、テキスト文書を作るならワープロソフトを使う利点はほとんどなく、むしろ余計な操作(「テキスト形式」保存にする)が必要なだけ無駄になります。

 3 では、テキスト文書にすると、何がいいのでしょうか。
 第一に、テキスト文書は保存に最も適した形式の文書であるということができる点です。

 (一) テキスト文書であれば、どんなワープロソフトでも読むことができます。
 例えば、一太郎文書なら普通は一太郎だけでしか読んだり、編集したりすることができません。ワードでも読むことはできますが、それは(おそらく)一太郎ユーザーを取り込もうというマイクロソフトの策略に沿って入れられている機能に過ぎず、そのようなことを一般的に期待することはできません。また、テキスト・コンバーターソフトのような、一定の文書を他の形式の文書に変換するソフトもありますが、そもそもテキスト文書であればそのような変換を必要とせず、どんなワープロでも読み込むことができるのです。
 この意味で、他人とデータのやりとりをする際にはテキスト文書が最も適しているということができるでしょう(パソコンではないワープロとの間でも、普通はテキスト文書(MS−DOS文書)としてなら相互にやりとりができます。)。
 この利点は、ワープロとして一太郎を常に使っているうちには大きな利点とはいえず、相対的なものですが、数年のスパンで考えてみるともっと大きな意味があります。つまり、一太郎文書は、後に一太郎から他のワープロソフトに乗換えた際に、それを読むことができる保証がないということです(そのためには、乗換え後も一太郎ソフトを削除せずにおいておけばいいのですが、ハードディスクの無駄ですし、将来OSが変わった時に一太郎が作動するかどうかも保証がありません。ジャストシステム社が倒産することもあり得ることを想定すべきです。)。現に、私は昔「松」という98用ワープロソフトを使っていましたが、その際作成した松文書(「.BUN」)は、現在使っているIBM互換機パソコンでは読むことができません。このような心配は杞憂とも思えるのですが、一般にパソコン・ソフト業界は末端のユーザーのことなど考えもせずに動いているので、最悪のケースを想定しておく必要があります。

 (二) 次に、これは些末な問題ですが、テキスト文書は一般に一太郎などのワープロで作った文書に比して、サイズが圧倒的に小さくて済みます。ワープロ文書に比して、装飾を落としてデータだけを保存しているので、当然といえば当然の話でしょう。
 一般に、文書を作っていると、その場限りの文書というのも多く、用件が終われば即刻削除してしまうという方もいるでしょう。しかし、ある文書を一旦作った以上は、将来それを再利用する可能性というのもなくはないし、また、そうでなくても、保存しておけば将来何らかの役にたつかも知れません(データをそれだけで終わらせるのではなく、データベース的に使うことを考えるべきです。この点は、GREP検索の問題として触れます。)。そのためには、サイズの小さいテキスト文書で保存しておいた方が若干ではあれ有利であるというべきでしょう。
 なお、ワープロと比較したときはサイズの大きさは余り大きな問題ではありませんが、Exel等の表計算ソフトと比較したときはファイルサイズの比は圧倒的です。他の表計算ソフトとの互換性の観点からも(マイクロソフト社でさえ、倒産しないとは限りません。)、表計算ソフトで作ったデータは、保存用としてはテキスト文書(CSV形式、TSV形式など)で保存することをお勧めします。

 4 テキスト文書として保存する意味の第二点目(実用的にはこちらの方が大きいと思う。)は、GREP検索が利用できることです。
   GREP検索については、別稿を参照して下さい。


四 その他の利点

 1 動作が軽快である。
 あなたが高機能のパソコンを使っており、メモリもたくさん積んでいるなら、一太郎も軽快に使えることと思います。しかし、そうでない場合、起動・カーソル移動・検索(置換)・ファイル保存等の各場面で相当イライラさせられたことがあるのではないでしょうか。
 秀丸なら、全くストレスなしに使うにはやはり相当程度の機能のパソコンが必要になりますが、WINDOWS95がかろうじて動くようなパソコンでも一太郎に比して相当軽快に動きます(私のパソコンは、SX33で12MBですが、普通に使えています。もっとも、WINDOWS3.1のころに比べると相当遅くなったような気がします。)。
 特に便利なのは、秀丸の常駐と瞬間起動です。これは、「その他」→「動作環境」→「ウィンドウ」で設定するのですが、これをチェックし、例えば「CTRL+SHIFT+H」にキーを割り当てておくと、いつでもCTRLとSHIFTを押しながらHを押すと、「新規作成」「GREPの実行」等の秀丸のメニューの一部が画面右下に広がります。しかも、その中には最近保存したファイルが新しいものから順に9個表示されるのでそこから即座にそのファイルを開くことができるし、また、同様に9個のフォルダが選択できるのでファイルを早く開くのが容易です。
 秀丸で文章を作って、印刷だけワープロを使う、というやり方は、面倒なように聞こえるかもしれません。しかし、エディターのスピードを一旦知ってしまうと、ワープロで文章を作るのがもどかしくなってしまうものです。

 2 キーカスタマイズが容易である。
 エディターの利点として雑誌等で挙げられていたものの、私はもともとWINDOWS3・1からパソコンに入り、専らマウスを使う方法になれていたので、最近までこのキーカスタマイズなるものの利点が理解できませんでした。
 しかし、キーボードで文字を入力していて、マウスに手を伸ばすのは面倒ですし、思考の流れを妨げます。キーボードだけで必要な操作ができれば、これに越したことはないでしょう。このことは、ブラインドタッチになれ、入力スピードが上がるにつれて痛感されることです。なお、「ALT」キーを押すと「ファイル」「編集」等のメニューが選択できるようになり、マウスに比べると便利ですが、それでも、例えば「ファイル」を選んで、その中の「上書保存」を選ぶなどしなければならず、キー操作に比して手順が増えるのが不満です。
 たとえば、文書入力中にある範囲を選択し(選択も、マウスではなく、SHIFTキーを押しながら「→」「←」キーで行うのが早い。)、CTRLキーを押しながら「X」キーを押すと「切り取り」、「C」キーを押すと「コピー」となり、同様に、CTRLキーを押しながら「V」キーを押すとカーソルの位置に「貼り付け」になります。これは、ほとんどのソフトで共通ですし、「X」「C」「V」は左手手元の押しやすい場所にあるので、真っ先に覚えるべきものでしょう。また、CTRL+Sで「上書保存」されます(これも、ほとんどのソフトで共通しているようです。)。これに慣れると、メニューから「切り取り」「コピー」「貼り付け」「上書保存」を選ぶ必要はなくなり、入力スピードが上がります。
 メニューから選べることは、このように全てキー操作で行うことができます。私は、「検索」にCTRL+Fを、「上検索」にF3を、「下検索」にSHIFT+F3を割り当てていますが、これによって、文書入力に邪魔にならず気軽に検索ができるようになりました。
 こうした機能は、普通のソフト(一太郎等)にも付いているのですが、覚えるのが大変です。また、自分のよく使う機能が使いやすくて覚えやすいキー割り当てになっていればいいのですが、そうでない場合もあります。これを、秀丸なら、「その他」→「キー割り当て」で自由に変えることができるのです。
 ともかく、キー割り当ては、どの機能をどのキーに割り当てたかを覚えていなければなりません。その意味で、最初はCTRL+X・C・V・Sをまず覚え、順次自分が必要な機能をキー割り当てしていく必要があります。何だか覚えるのが大変そうですが、少しずつ使えるキーを増やしていくことで、自然に指が覚えてしまいます。
 今の私は、自分でキー割り付けした秀丸でないと文章を作る気になれません(キー割付は、一旦作成すれば、それを他のパソコンに入っている秀丸に移すのは簡単です。)。もっと早くこの使い方を誰かに教えてもらっていれば・・・とつくづく思います。

 3 多用なマクロが公開されている。
 詳しくは別稿を参照して下さい。


五 秀丸の入手方法等

 1 一般には他のシェアウエアソフト同様、パソコン通信(ニフティーのFWINAL等)やインターネットで入手することになります。
 しかし、秀丸ほどメジャーなソフトになると、雑誌の付録CD−ROMに付いているものを利用した方が早いといえます。いつの時点でも、本屋に行ってパソコン雑誌を探せば、少なくとも一つは秀丸を収録したCD−ROMを附録とした雑誌が見つかるはずですから、ぜひ探してみて下さい。

 2 CD−ROMには、普通、秀丸は圧縮された形式(LZH形式)で収録されているはずですから、解凍しなければなりません。これも、雑誌に解凍方法が書いてあるはずですので、そちらを参考にして下さい。

 3 秀丸はシェアウエアソフトなので、無料で試用することができます(試用期間中も機能制限はなかったと思う。)。が、使用を継続しようという場合は送金しなければなりません。4000円だったと思います。
 かつては、ワープロソフトが1本数万円したので、シェアウエアソフトの価格は非常に魅力的でした。ところが、最近大手ワープロソフトも1本1万円程度になり、秀丸同様の値段のワープロソフトすらあります。この意味で相対的に秀丸は高価になってしまいましたが、4000円を支払うだけの価値はありますので、ぜひ送金して、秀丸を使いこなして下さい。



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