平成11年7月1日更新

建物建築請負人の建物敷地に対する商事留置権の成否





一 はじめに

 建築請負人が建築請負契約に従って注文者所有の土地にビルを建てたが、請負代金が完済される前に注文者が倒産するなどして右ビル及び敷地が競売に付された場合、請負人は敷地についても商事留置権(商法521条)を主張することができるか?
 調べてみると、昭和46年にこの問題を扱った地裁判例があったが、その後長いことその種の判例がなかった後、平成6年以後、数件の判例が立て続けに出された。しかも、それらを見てみると、肯定例と否定例に分かれており、学説も大きく分かれている。
 そこで、この問題について、最近の判例をまとめてみたので、紹介したい。

 なお、問題は、
 1 そもそも商事留置権は不動産についても成立するのか(二)
という側面と、1が肯定されたとして、
 2 では、土地についても商事留置権が成立するのか(三)
という側面に分かれるので、以下、その順序で検討してみることとする。


二 商事留置権の目的物に不動産も含まれるか

 1 否定判例
 東京高裁判決平成八年五月二八日判時一五七〇号一一八頁

 (一) 事案

 Yは株式会社であり、Xは元Yの専務取締役であった。
 Xが、Y会社に対して倉庫・事務所を賃貸していたところ、賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除して、その返還を求めたのが本件である。
 Yは、Xに対しては貸金債権等の債権を有しており、商事留置権が成立すると抗弁している。

 (二) 判旨

  (1)次のような理由により、商法521条「物または有価証券」には不動産は含まれないので、Yの抗弁は主張自体失当である。

 (制度の沿革)ドイツ旧商法が中世イタリアの商人団体の慣習法をもとに商事留置権を明文化したが、ドイツ法では有体動産に限られ、不動産は含まれていないという解釈が判例上確立していた。

 (立法の経緯)日本の商法の商事留置権は、ドイツ旧商法を模範として作られている。そして、わが競売法は、留置権者に競売申立権を認めていたが、動産については商法の規定によって競売すべき場合も規定していたのに(3条)、不動産については商法の規定によって競売すべき場合を規定せず(22条)、不動産については商法の規定による競売は認められないと解されていた。

 (当事者意思)商事留置権は当事者の合理的意思に基礎を置く。しかし、「商人間の商取引で一方当事者所有の不動産の占有が移されたという事実のみで、当該不動産を取引の担保とする意思が当事者双方にあるとみるのは困難であり、右事実のみを要件とする商人間の留置権を不動産について認めることは、当事者の合理的意思に合致しない。」

 (法秩序全体の整合性)「登記の順位により定まるのを原則とする不動産取引に関する法制度の中に、目的物との牽連性さえも要件としない商人間の留置権を認めることは、不動産取引の安全を著しく害するものであって、法秩序全体の整合性を損なうものである。」

  (2)なお、Xは父親から相続した土地に、Yに貸与する目的で本件倉庫を建築し、Yにのみ貸与してきたこと、本件事務所も同様の目的で取得しYに貸与してきたことからすると、Xの「本件倉庫、事務所の取得と貸与は、反復継続して、利益を得て賃貸する意思をもってなされたものではなく、商法五〇二条一号所定の賃貸のための投機取得、その実行行為としての賃貸とはいえない。」から、この点からもY主張の商人間の留置権は認められない。

  (3)よって、Xの請求を認めた原判決は相当であるから、控訴を棄却する。(上告)

 (三)これは、淺生重機裁判官が右陪席裁判官として関与した判決である。
 淺生重機「建物建築請負人の建物敷地に対する商事留置権の成否」(金融法務事情1452号16頁)は、不動産については商事留置権は成立しないとする。その根拠は、8年5月28日判決と同じ4点の他、旧商法時代は不動産を含まないというのが通説だったし、新商法になってからも同様の解釈が連綿と続いていることも挙げている。


 2 8年5月28日判決以外の判決は、不動産も含まれることを当然の前提として、商事留置権の成否について検討している。

 なお、新潟地裁長岡支部判決昭和46年11月15日判時681号72頁(後記)は、商事留置権は「商人間で通常予想される継続取引の必要性、すなわち、信用取引の必要性と個別的に担保を設定する煩雑さを回避すること等の要請」から設けられたものであるから、不動産についても商事留置権が成立するかどうかは、疑問がないわけではない、としながらも、商法521条は「物または有価証券」としているから、文言上不動産が含まれないとする根拠はないとして、不動産についても商事留置権が成立するとしている。


 3 淺生裁判官の立論は極めて説得力がある(そうであるが故に、合議体は淺生裁判官の判決起案を任せたのであろう。しかし、さすがにこのような空前絶後の判決に心配が生じたのか、「仮に商事留置権が不動産について成立したとしても・・・」との記載をしている。)。

 しかし、立法論としてはともかく、解釈論として一般の支持が得られるかといえば疑問であろう。私は、不動産についても商事留置権が成立するものと解したい(理由は、後記福岡地裁判決平成9年6月11日判タ947号291頁を参照のこと。)。


三 敷地に対する商事留置権の成否

 1 肯定判例

 (一)新潟地裁長岡支部判決昭和46年11月15日判時681号72頁

  (1)事案

 請負人Xが建物を建築・完成させたが、注文者Aが代金を払わないので、X名義で保存登記をして土地を占有していた。
 Y税務署は、Aに対する国税滞納処分として、右土地を差し押さえて換価した。
 Xが、土地に対する留置権を主張して、国税徴収法21条により換価代金に対する優先権を主張したのが、本件。

  (2)判旨

    1 請負代金債権は建物に関して生じたものであるから、敷地については牽連性が認められず、民事留置権は成立しないが、商事留置権では民事留置権の様な牽連性は要求されていないから、本件では商事留置権の成立が認められる。

    2 しかしながら、本件では、XはYに対して、留置権を有することを確知させるに足りる程度の具体的事実を記載した書面(国税徴収法施行令4条1項)を提出しておらず、国税徴収法21条2項にいう留置権の証明がなされたとは認められない。

    3 よって、請求棄却(確定)。

  (3)前記淺生論文は、要旨「本判決は、国税徴収法の解釈によって結論を出しているので、商事留置権の成否に関する判断は傍論に過ぎない」とする。全くもってそのとおりという他ないであろう。

 (二)東京高裁決定平成六年二月七日判タ八七五号二八一頁

  (1)事案

 建築請負人Xが占有しているビル及びその敷地が競売に付せられた。
 執行裁判所は、Xについて商事留置権を認めて、被担保債権を買受人が負担すべきものとして最低売却価格を定めた。
 建物・敷地所有者Yが、右の点を主張して、売却不許可事由があるとして執行抗告した。

  (2)判旨

 商事留置権が成立していることは明らかであるとして、抗告を棄却した。

  (3)前記淺生論文は、要旨「本件では、請負残代金が建物価格以下だった。したがって、土地に対する留置権が成立していなくても、土地の最低売却価格は減額すべきでなかったが、建物の最低売却価格は更に減額すべきだったのであり、結局、全体としての評価に誤りはなかった。したがって、本決定は結論的には正当である。」としている。

 もとより、商事留置権を肯定するか否かによって土地・建物の最低売却価格が変動するし、配当表も変化を生じ得るだろうが、「取消決定の当否」という限りは、右の淺生論文の指摘は正当であろう。


 2 否定判例

 (一)東京高裁決定平成六年一二月一九日判時一五五〇号三三頁

  (1)事案

 建築請負人Xが基礎工事の途中で注文者との協議により工事を中止して占有しているビルの敷地が競売に付せられた。
 執行裁判所は、Xについて商事留置権を認めて、被担保債権を買受人が負担すべきものとして評価額から控除した結果、最低売却価格が0となるとして、競売手続を取り消す旨決定した。
 競売申立人Yが、右決定の取消しを求めて執行抗告した。

  (2)判旨

    1 Xは本件土地を板囲いで囲い、看板を掲げるなどしているが、なお土地の占有を有すると認め得るか疑問である。
    2 仮にこれを肯定しても、契約者の合理的な意思解釈としては、別段の約定がない限りは、請負人は工事に必要な限度で敷地を使用する権原が与えられているに過ぎないと見るべきである。
 また、Yが根抵当権設定登記をした後にXの占有が開始されたのであるから、XはYに占有権原を対抗できず、Yとの関係では不法占有と解すべきであるから、この点からも、商事留置権を主張することはできないものと解すべきである。
    3 よって、Xは土地について商事留置権を有しないから、剰余を生じる見込みがないとはいえないことが明らかである。
    4 原決定取消

  (3)この決定については後記山崎論文が詳細に検討している。

 (二)東京地裁判決平成六年一二月二七日金融法務一四四〇号四二頁

  (1)事案

 Xは、抵当権実行のための不動産競売事件で、本件土地を競落し、所有権を取得したとして、土地を占有するYに対して建物収去土地明渡を求めた。
 Yは、本件土地上の建物を請け負って建築したが、代金が支払われていないとして、留置権を主張した。

  (2)判旨

    1 Yの主張が全て認められたとしても、留置権は本件建物について成立するのであり、本件土地に及ぶものではない。
    2 請求認容(確定)

 (三)東京地裁判決平成七年一月一九日判タ八九四号二五〇頁

  (1)事案

 請負人Xは注文者Aの注文により本件土地上に本件建物を建築したが、Aが残代金を払わないまま倒産した。
 そこで、Xが、破産管財人Yに対し、本件土地建物について商事留置権を有する旨の確認を求めたのが本件。

  (2)判旨

    1 本件建物の所有権がYにある以上、敷地である本件土地の占有はYにある。
 Xは、本件契約に付随して本件土地の利用を認められたにすぎず、土地について独立の占有を有しない。
    2 よって、建物の商事留置権は認められるが、土地の商事留置権は認められない。(確定)

 (四)福岡地裁判決平成9年6月11日判タ947号291頁

  (1)事案

 注文者Aが倒産したため、建物建築請負人Xが建築途中の建物及び敷地の占有を開始した。
 敷地には、Yのために抵当権が設定されていた。
 破産管財人は、本件土地建物を一括売却した上で、土地売却代金をYに、建物売却代金をXに配当する旨の配当表を作成した。
 そこで、Xが、配当期日に異議を申し出た上、Yに対し配当異議の訴えを提起した。

  (2)判旨

    1 商法521条「物又は有価証券」には、不動産も含まれる。
 請負人はその占有に帰した注文者所有の不動産を請負代金債権の担保物権とする意思を有しており、事前の担保を設定せずに工事を施工させる注文者も請負人の意思を了解していると解するのが相当である。
 更に、民事執行法195条は留置権による競売の目的物について制限を加えておらず、商法521条も文言上不動産を排除していない。
    2 しかし、請負人の敷地占有は、留置権に基づく建物占有の反射的効果に過ぎない。留置権によって担保される価値は実際に工事を行った建物の価値を標準とするのが公平の観念に適する。
 したがって、特段の事情がない限り、商事留置権の成立に必要な占有とはいえない。
    3 よって、Xは敷地について商事留置権を有していたとは認められない。
    4 請求棄却(確定)


 3 山崎敏充「建築請負代金による敷地への留置権行使」(金融法務事情1439号62頁)

 (一)東京地裁執行部(21部)では、平成8年1月現在、敷地についても商事留置権が成立するものとして、物件明細書に記載し、また、被担保債権額を評価額から控除する扱いをしている。そして、前記東京高裁決定平成6年2月7日は、この扱いを是認したものである。

 (二)そのような中、商事留置権の成立を否定する前記東京高裁決定平成6年12月19日が出た。

  (1)本決定は、請負人に土地の占有が認められるか疑問であるとする。
 確かに、本件では基礎工事中に工事が中止されており、土地上には未完成建物といえるものすら存在しなかったのであるから、占有の有無を判断する上でマイナスに働く決定的な要素といえる。
 また、本件では、工事中止について注文者と請負人が合意し、同時に残代金額の確認と現場の現状維持等についても合意がされているという特殊性がある。この合意によって占有は注文者に帰し、その後現状維持のためにされた囲い等の措置は、請負人が占有補助者的地位でしたものと考えることができる。

  (2)本決定は、請負人の敷地占有は工事施工のために必要な限度で認められたにすぎず、このような目的での占有を商事留置権の基礎とするのは、当事者の通常の意思に合致せず、債権者の保護に偏する、とする。
 しかし、商事留置権の成否判断に当たっては、占有の趣旨・目的、占有を取得するに至った経緯は問題とされない。債権者の保護に偏するというのは、商事留置権の目的物に不動産も含まれるということに起因していることである。

  (3)本決定は、請負人は、抵当権者との関係では不法占有者と解されるとする。
 しかし、抵当権が設定された土地であってもその使用・収益は禁止されていないのだから、請負人の土地占有は不法行為に基づくものとも、それを類推すべき場合ともいえない。

 (三) 結局、(1)が大きく、そのような特殊性を前提として(2)(3)を考慮したに過ぎないと見るべきである。
 したがって、執行部としても、扱いを変更するのは相当ではないと考えている。


 4 その他の論文

  (一)肯定説
   ・河野玄逸弁護士「抵当権と先取特権、留置権との競合」銀行法務21・511号94頁以下
   ・座談会「ビル・マンション業者の倒産と対応策」金融法務事情1333号20頁以下の青山善充教授発言

  (二)否定説
   (1)請負人は占有を有してはいるが、その占有権原は工事施工に必要な範囲に限定された特殊なものであるから、この占有を根拠にして商事留置権の成立を認めることはできないとするもの。
    ・栗田哲男教授「建築請負における建物所有権の帰属をめぐる問題点」金融法務事情1333号7頁以下
    ・鈴木正和「建物請負代金の未払と敷地抵当権者の権利」判例タイムズ798号72頁
    ・島田清次郎「大阪地裁における民事執行の実務」NBL613号6頁
   (2)請負人の占有は認めざるを得ないが、その占有は「商行為によって」生じたとはいえないとするもの。
    ・小林明彦弁護士「建築請負代金未払建物をめぐる留置権と抵当権」金融法務事情1411号22頁以下
   (3)請負人は注文者の占有補助者に過ぎず、独立の占有を有しないとするもの。
    ・澤重信「敷地抵当権と建物請負報酬債権」金融法務事情1329号22頁

  (三)商事留置権の成立を認めるが、抵当権設定時期と占有開始時期の先後により優劣を決めるとするもの。
   ・秦光昭「不動産留置権と抵当権の優劣を決定する基準−建物の建築請負代金について敷地に商事留置権が成立するかどうかが争われた2つの判例−」金法1437号37頁
   ・生熊長幸「建築請負代金債権による敷地への留置権と抵当権(下)」金法1447号37頁

 5 コメント

 上記の山崎論文・島田論文によれば、東京地裁執行部では肯定的に、大阪地裁執行部では否定的に取り扱いをしているとのことである(平成9年12月現在については文献上不明であった。どなたか、ご存知の方はご教示頂けると幸いです。)。
 しかし、裁判例を見てみると、二1の淺生判決を除けば、東京高裁決定平成六年一二月一九日判時一五五〇号三三頁以降、否定例が定着してきているように思われる。
 そして、そもそも、請負人に敷地についてまで商事留置権を認めて保護すべき積極的な理由というのは見出しがたいであろう。
 私は、請負人には独立した占有が認められないとして商事留置権を否定的に解したい。



補足

 平成11年7月1日

一 その後も、この論点はホットな話題になっているようであり、積極・消極両方の判決が出されている。


二 積極判例
  東京高裁決定平成10年11月27日判時1666号141頁

 1 事案

 Y建設は、Aとの契約により、A所有の本件土地(Xのために抵当権が設定されている)上に、地下1階付6階建て建物の外形をほぼ完成させた(天井・囲壁・床・階段が完成し、1階と6階の鉄柱と各階の天井の化粧板工事、外装吹付が未了の状態)。
 そのころ、Aが破産したので、Yは、工事を中止し、万能板で本件建物を囲んで、施錠し、施工業者がYである旨の表示をした。本件土地は、固定資産税等の支払が多額となることから、Aの破産管財人が破産財団から権利を放棄した。
 その後、Xの競売申立てにより本件土地等について開始決定がされたが、執行裁判所は、Yの商事留置権を引き受けるべき権利と判断して、本件土地の最低売却価格をゼロとし、競売手続を取り消す決定をした。
 本決定は、これに対する執行抗告決定である。

 2 判旨

 (一)商法521条は商事留置権の成立する物を動産に限定しておらず、また、本件土地に対するYの占有の態様は同条所定の占有と解することができる。商事留置権の成立には物と債権との牽連性を要しないから、Yは本件土地の商事留置権を取得したと認められる。

 (二)その後、Aが破産宣告を受けたことにより、Yの商事留置権は破産法93条1項により特別の先取特権とみなされることになった。商事留置権が特別の先取特権とみなされる場合には、商事留置権者が物を留置していなければならない合理性はなくなるのだから、原則として留置権能・使用収益権能は失われると解される。
 (三)特別の先取特権に転化した商事留置権と、抵当権との優劣関係は、対抗要件の具備により決すべきである。
 本件では、商事留置権が成立する以前に抵当権設定登記がされていたから、Xの抵当権が優先する。
 そうすると、本件土地の最低売却価格を決めるに当たっては、Yの留置権は考慮することを要せず、剰余を生ずる見込がないとはいえない。よって、原決定を取り消す。


三 消極判例

 1 大阪高裁判決平成10年4月28日金融商事1052号25頁

 次のような理由により、商事留置権の成立を否定した。
 (1)もともと建物建築工事の請負人が取得する敷地の占有は、建物建築工事施工のために限定されたものであって、建物完成後も請負人が敷地の占有を継続するのは、当初の目的を超えたものというべきである。
 (2)また、商事留置権が成立したのは抵当権設定後であり、抵当権者は商事留置権の成立を予測するのは不可能であるところ、建物請負人の商事留置権に基づく敷地の占有を抵当権者等に対抗できるとすれば、融資取引の安全、安定を著しく阻害する。

 2 東京高裁決定平成10年12月11日判時1666号141頁

 前記東京高裁決定平成10年11月27日とほぼ同じ事案で、以下のような理由により、商事留置権の成立を否定した。
 (1)請負人の土地利用は、使用貸借など独立の契約関係に基づくものではなく、建築工事をして引き渡す義務を履行するために、注文主の占有補助者として土地を利用しているに過ぎない。したがって、商事留置権を基礎付けるに足りる独立した占有には当たらない。
 (2)本件では、注文主の破産により工事を中断した時点で、既に独立の所有物の対象となる程度まで建物は完成しており、請負人が建物の所有権を原始取得している。この場合の土地の占有は、請負契約に基づいて請負人が取得したものではなく、商行為により占有を取得したものとはいえない。
 (3)請負人は万能板で建物を囲っているが、これによって本件土地を占有しているとまではいえない。


四 なお、灘波孝一「最近の民事執行における諸問題−裁判実務の現場から−」平成10年度秋季弁護士研修講座155頁によれば、東京地裁21部では現在でも積極説の扱いをしているとのことである。
 灘波は、否定判例について検討し、「独立の占有がない」という理由は「それはそれで説得力があると思います」が、その余の理由(請負人の保護に偏する、抵当権設定当時は商事留置権成立は予見できない)は「疑問と思われます」としている。
 また、未公刊ではあるが、東京高裁決定平成10年6月12日も、消極説に立つことを明らかにしているとのことである。

 私自身は、前も書いたとおり、消極説の方が説得力があるし、結論的にも妥当だと思うものである。




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